企業の「背骨」をつくるリブランディング

CDエナジーダイレクト × セイタロウデザイン リブランディングプロジェクト座談会

CDエナジーダイレクトは、中部電力ミライズと大阪ガスが50%ずつ出資して2018年に設立された合弁会社であり、関東エリアの首都圏近郊を中心にエネルギー事業を展開しています。

創業から丸6年が経過する2024年4月のタイミングで、同社は大々的なリブランディングを実施しました。パーパスやビジョン、ミッション、バリューを新たに定め、それらをもとに企業ロゴも刷新。ブランド名を「CDエナジー」として、次のステージへと踏み出します。

■ブランドパーパス

■新ブランドロゴ
【旧ロゴ→新ロゴ】

【新ロゴ(コーポレート・ビジネス事業向け/リビング事業向け)】

リブランディングを担当したのは、多数の企業ブランディングを手掛けてきたセイタロウデザイン(代表取締役/アートディレクター 山崎晴太郎)。今回はCDエナジーの八木社長(2024年3月当時)を含むプロジェクトメンバー十数名に対して、リブランディングの背景やプロセス、期待する効果などを座談会形式で聞きました。

 

社内に現れた創業期からの変化の兆し

――まずはリブランディングを行うことになった背景から教えてください。

八木(CDエナジー 代表取締役社長) 1、2年ほど前より会社の根幹からパーパスをつくりたいと考えていました。そこから社内メンバーとコミュニケーションを取っていくなかで、パーパスの設計に加えて、アウターブランディングとインナーブランディングの3点セットでリブランディングを実施しようという発想に至りました。

 

山崎(セイタロウデザイン 代表) CDエナジーさんは2018年設立ですよね。なぜ、このタイミングでそれをしようと思ったんですか?

八木 弊社は中部電力ミライズと大阪ガスからの出向社員が少数でスモールスタートした会社です。創業時と比べて現在はメンバーが増えてきて、親会社の経営方針だけでは不足しているものがあると感じるところがあり、「首都圏で新しい事業をやっていくために必要なものってなんだろう」と、原点にもう1回返る行為だったと捉えています。

 

清水(CDエナジー) 僕も立ち上げ期からフェーズが変わってきたように感じていて、その違いが如実に出てきたタイミングでしたね。

 

松本(セイタロウデザイン) 最初にお話したときに「社内の文化がちょっと薄まってきている」というご意見があり、パーパスをこのタイミングで決めるべきなんじゃないかというところも伺っていました。

 

 

――リブランディングのパートナーとしてセイタロウデザインを選んだ経緯はどのようなものでしたか?

清水 今回のリブランディングはパーパスやビジョン、ミッションを決めることもあり、アートディレクターの視点に加えて「経営者の視点」もあわせもっていることを重視して、セイタロウさんにお願いしたいと思いました。デザイン面でいうと、他のエネルギー会社はいかにもエネルギーっぽいものが多かったので、そういうところと一線を画すものをつくりたいという思いもありました。

 

八木 デザインがとても特徴的だと感じていて、実績を見ると私が気になっている企業も手掛けられていたので、強く関心をもちました。

 

 

パーパスに込められたブランディングの根幹

 

――リブランディングプロジェクトのプロセスを最初から振り返らせてください。まずはどこからスタートしましたか?

 

松本 まず前段階として、「そもそもブランド/ブランディングとは何か」という共通認識を全員で共有するための勉強会を開きました。その上でプロジェクトの初手として、今回は10名以上のプロジェクトメンバーに参加していただいたので、みなさんの意見を知りたくてワークショップを丸1日かけて実施しました。現在の強みや、あるべき姿など未来志向のテーマで実施し、加えて八木社長や前田副社長、さらに親会社の方々など、総勢10名の方へのヒアリングを実施。それを元にパーパスの方向性やたたき台をつくっていきました。

 

山崎 みなさん、ワークショップやってみてどうでしたか? 普段は実務に追われて視座を未来に持ってく機会がなかなかないと思うんですけど。

 

土屋(CDエナジー) 初手がワークショップなのは非常に良かったですね。言語化する訓練を僕らは受けていない中で最初にそれをすることで、どこかで聞いたような、借りてきた言葉を書くのではなく、ちゃんと自分の言葉で書くという1歩目になった気がします。

星(CDエナジー) 1つのお題に対して短時間で複数回答を出すことは大変でしたけど、あれで考える瞬発力がつき、一人ひとりの考え方をみんなで共有できたので、とても良い場でした。

 

松本 僕達としても業界や内部のことがよく理解できて、さらに「風通しがいい」や「少数精鋭」など共通のキーワードは出てきたので、そこが強みとしてあるということも把握でき、貴重な時間でした。

ワークショップの実施風景

 

――ワークショップやヒアリングをもとにパーパスなどの設計していった形ですね。

 

山崎 はい。こうしたベースをもとにディスカッションを重ねてパーパスの「変わりゆく未来の 揺るぎない安心を、納得から。」というものが決まりました。「変わりゆく未来」という一見ネガティブな要素が入っているのですが、世間の方々が実際に感じている未来のイメージから目をそらさず、お客さまと併走しながらより良くしていく、企業としての意思を示そうという声が出て決まりました。

 

松本 「納得」というのは大きいワードでしたよね。

 

八木 お客さまに納得してもらう意味がもちろんありますが、お客さまに納得してもらうためには、それを提供している我々が納得している必要があります。広い意味で言うと、社会もお客さまなので、「社会とお客さまと私たち」ですね。そこがこのブランディングのスタート地点というか、中心になるところだと思いました。

――ビジョンには「見えない価値を『選べるサービス』に変える」という言葉が含まれていますが、どのような思いが込められていますか?

 

八木 「見えない価値」はエネルギーを指していて、使っていることを意識しないエネルギーを、お客さまに「サービス」として認識していただきたいという思いが入っています。その結果、納得して選んでいただけるという風に、パーパスとも繋がっていると考えています。

 

松本 今までのエネルギーインフラは「供給」という認識が強いなかで、それを「サービス」に昇華させていくことが大事という話をされていたのが印象的でした。だから「選べるサービス」というワードがビジョンに入っていて、お客さまが主体になって選べるところがポイントになっていますよね。

 

山崎 ワークショップのときに「民主化」というキーワードも出ましたよね。もう1回、サービサーとして引き戻してくるという強い意思を感じて、それがこの形になったと思います。

ロゴに「目」をつけた理由

――パーパスやビジョンが決まった後にロゴの作成ですよね。完成したロゴの印象はいかがですか?

八木 パーパスは素直な感じで、あまり尖らせないようにしたのですが、一方でロゴは存在感があって、その組み合みあわせが絶妙ですね。

樋田(CDエナジー) このロゴを見て「もうこれしかないない」と思いました。以前のロゴはいかにもエネルギーっぽい感じがしましたけど、これは好きですね。

福田(CDエナジー) 以前のロゴはカクカクして、しっかりしてますみたいな雰囲気ですよね。このロゴは親近感というか、近しい感じがします。

 

上田(CDエナジー) 中部電力ミライズと大阪ガスが手と手を取り合いCDエナジーを続けていくという意味も含まれていて、それがうまく表現されていますよね。

 

山崎 僕はこれまでにもたくさんの企業ロゴをつくってきたのですが、「目」をつけたのは初めてでした。その理由はCDエナジーさんの「人っぽさ」を表現したかったからです。以前からエネルギーには肌ざわりがないと感じている中で、CDエナジーさんの社員の方々の人間っぽさや、お客さまや相手の人軸で考えたいというサービスの思いなどの“質感”みたいなものを出して、温度をもっているロゴにしたいと考えました。

清水 本プロジェクトの少し前からSNSをスタートしたんですが、ロゴに目があると顧客とのコミュニケーションは断然取りやすいなと思いました。

 

■ロゴデザイン意図

これで終わりではない。これからも続く

――今回のリブランディングに対して、社内の反応はいかがですか?

八木 ロゴに対する関心は非常に高いと思います。これがあることによるプラスの効果は今後、定着することでさらに出ると感じています。

 

樋田 僕はロゴを見て「これまでのエネルギー会社とは違うことができるんじゃないか」「お客さまにもっと寄り添えるんじゃないか」という期待感をもっています。

 

清水 会社の立ち上げ時は満点を目指さずに、とにかく前に進めることが大事ということもあって、その結果としていろいろな要素が散らばっていたので、どこかで綺麗にする必要性は感じていました。それを実施するには、社員にとっての「拠り所」や「意思統一をはかれるもの」が必要だと思っていて、まさに今回のリブランディングでそれができたと実感しています。

山崎 企業にとっての「背骨」みたいなものですよね。

 

福田 私が入社した2020年頃は、創業した人たちがすぐ近くにいて、その人たちの息遣いが聞こえるような環境で働いていたのでコミュニケーションを取らなくてもわかる感じでしたけど、会社がどんどん大きくなるにつれて、誰が何をしているかわからないところがありました。今回のリブランディングによって、創業期のメンバーの思いを新しく入ったメンバーに橋渡しする、共有する機会になったんじゃないかと思っています。

 

熊澤(CDエナジー) 私も同感で、みんながどこを向いて仕事しているのかよくわからない時があり、同じ方向を向けるものがずっと欲しいと思っていました。そのタイミングで自分がちゃんと意見を言えて、みなさんのいろいろな意見を聞けて、みんなが納得できるようなものができたことが一番うれしいです。

――ありがとうございました。最後に、八木社長から一言お願いします。

八木 今回、みなさんに力をいただいてリブランディングを手掛けたことはCDエナジーの経営としても大きなポイントだと思っています。でも、これで終わりではなく、第1ラウンドが終わったところです。これを1つのきっかけにして、CDエナジーの事業とそこで働く従業員の皆さんが成長していく場であってほしいと改めて感じたので、引き続きよろしくお願いいたします。

 

山崎 ありがとうございました。フェーズ2も引き続き、よろしくお願いいたします!

【プロジェクト詳細はこちら】https://seitaro-design.com/project/6194/

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